2009年6月22日月曜日

自動車が売れない訳

自動車が売れなくなったと、自動車メーカーが嘆いている。
やれ若者が乗らなくなったからとか、やれガソリンが高いからとか、まことしやかな理由を挙げている。

果たしてそんな理由がもとで自動車が売れなくなったのだろうか?
ところで、今日この頃のTVの自動車のCMを見ると、いまだにデザインや走行性の軽快さや燃費の良さを強調している。自動車が発明されてから100年ほどの歴史の中で、走行性能については十分に技術革新を図ってきたではないか。燃費もまだまだ改善の余地はあるものの、大声で強調するほどの改善がなされているのではない。デザインについても、具現の可能性が限られている範囲内でのバリエーションの域を超えていない。つまり、自動車メーカーは、いまだに自動車は内燃機関の改善に日夜取り組んでいることを主張するのがPRポイントだと考えたり、自動車が相変わらず贅沢品の延長だったり、自己実現のツールだと見なしているふしがあり、かなり昔のコンセプトに陥ったままのようだ。小刻みなモデルチェンジや古めかしい価値観での自動車づくりに、国民はあきあきしているのではないか。それが自動車が売れない本当の原因だと思う。
凡そ、法律で決められた安全機構を備え、法定の車線幅を法定の速度で走るとの制約条件下で生み出される自動車にそんなにバリエーションがあるはずがない。国民が求めているのは、いかに安全に走ったり停まったりできる自動車にしてくれるかということ。素朴に考えると、自動車とは前はある程度見えるが、車側や後部はまったく見えないもので、数百キロもある鉄の塊がわずかなアクセルとハンドルで動き出してしまう危険きわまりの無い物体。車庫入れや縦列といった行為は、教習所で習うものの、通常は慣れで行っているが、一度もヒヤリとしたことが無い人などいないだろう。こうした自動車を安全に動かす基本部分に何らかの工夫が目に見える形で施されてきただろうか。それも大衆車に対して。自動車の運転は緊張感なくしてはできない。こんなストレスが溜まるものに、日々楽しいものが身近にあふれている時代の若者が無理をして乗ると考える方がそもそもおかしい。
では、こうしたことへの対応は、技術的には難しいのだろうか?
ITSが唱道されてから優に10年は経つが、一部の高級車をのぞいてあまた走る自動車に走行の安全に関するITSの機能は搭載されていない。しかし、いくつかの技術は実用域にあるのだから、走行性や燃費ばかりに力をいれていずに、こうした最も基本的な部分の改善を進めれば、自動車は今よりは売れると思う。
そんなことをしたら、コストが高くつき、元も子もないではないかと言う声があろう。しかし、年間の自動車事故の死者は減ったとは言え、決して少ない数ではない。また、化石燃料の埋蔵量も多くは無い。そんな視点に立てば、高くても買える人だけにして、総台数を減らすことも必要ではないか。情報化は益々伸張するであろうから、人の移動需要は相対的に減る。かつてはビジネスのために時間を争って移動したが、いまやビジネスは情報システムで済む。移動をさほど急がないのなら、バスや電車でよいだろう。その方が資源節約にもなる。
これまで自動車産業はわが国だけでなく、他国においても主要産業であった。しかし、従来の価値観のままで自動車をつくり続けていくなら、早晩限界がくるだろう。自動車は既にインフラ化していると理解し、実用機能、安全機能に特化し、パーツも共通化し、スクラップ&ビルトを極力排した製品とするなら、今後も主要な産業として需要されていくことであろう。勿論、今以上に群雄割拠があるだろうが。
このテーマについても、今後、ウォッチしていく。